当ブログは心霊スポット探索を推奨していません。 立入禁止区域や私有地・国有地への無断侵入はおやめください。
また、当ブログ掲載写真の無断使用は禁止しています。 写真使用をご希望の方はお問い合わせページよりご連絡ください。

【心霊スポット】作業員の霊と神隠し!?山神トンネル(山神隧道)の怪談と不動尻キャンプ場の歴史【神奈川県】

Coco
ライター:Coco
怪談を書いたり、お化け屋敷を作ったり、全国の心霊スポットを巡ったりしています!
オカルト系
この記事は約20分で読めます。
  1. 🕯️はじめに:山奥の暗いトンネルに、作業員の霊が現れる?
  2. 🗺️山神トンネル(山神隧道)の情報
    1. 山神トンネルの基礎情報
    2. 山神トンネルの場所
    3. 周辺情報:鐘ヶ嶽と不動尻
  3. 👻山神トンネルに纏わる噂と心霊現象
    1. 作業服姿の男性――もっとも古くから有名な怪談
    2. トンネルの中から聞こえる、もう一人の足音
    3. 女性の霊、殺人事件、神隠し――噂の舞台が広がっている
    4. ゼロ磁場だから幽霊が出る?
  4. 🔎山神トンネルの歴史と噂をさらに深掘り
    1. そもそも山神隧道は、なぜ掘られたのか
    2. 長さ80m? 約200m? 数字が合わない理由
    3. 1970年、トンネルの奥に県立キャンプ場が誕生した
    4. 定員300人。意外なほど大きなキャンプ場だった
    5. 2002年7月のキャンプ場廃止と、林道のゲート
    6. キャンプ場跡の「子どもの霊」は、どこから生まれたのか
    7. 1998年、池田貴族『関東近郊ミステリースポット紀行』
    8. 実は1998年より前の訪問写真も残っている
    9. 建設事故は本当にあったのか
    10. 女性殺害事件と「神隠し」――年月日のない恐怖話
    11. 2012~2016年、林道の姿は変わっていた
    12. 1941年の洪水、そして二の足沢の砂防事業
    13. 山神隧道の上は、信仰の山・鐘ヶ嶽
    14. 現在の不動尻は、春のミツマタの名所
  5. 📷山神トンネル(山神隧道)に実際に行ってみた
  6. 🧪噂の真相と検証結果
    1. 確認できたことと、まだ分からないこと
    2. トンネルが怖いのは「何かがいる」から?
    3. 夜間の肝試しより、山道としての安全対策を
  7. 😱山神トンネル(山神隧道)の恐怖度
  8. ✍️まとめ
  9. 🔗関連する心霊スポット
  10. 💬読者の声・体験談を募集中

🕯️はじめに:山奥の暗いトンネルに、作業員の霊が現れる?

神奈川県厚木市七沢。

広沢寺温泉から山の奥へ向かう林道を歩いていくと、山肌に小さなトンネルが姿を現します。街灯はなく、入口に立っても向こう側の景色がよく分からない。観光用にライトアップされた施設ではなく、山を越えるために掘られた、実用的な隧道です。

その名は、山神トンネル(山神隧道)。

工事中に亡くなった作業員の霊が歩いている。暗闇から見知らぬ足音が近づく。近くでは女性が殺され、山中では神隠しまで起こった――。神奈川県では「化けトン」の異名でも知られる心霊スポットです。

ところが、この場所の歴史を調べると、怪談とは違うものが見えてきました。山神隧道は、厚木市が現在も正式なハイキングコースの一部として案内しているトンネル。そしてその先には、かつて300人を受け入れられる県立キャンプ場がありました。

一方、ネット上では「昭和初期に完成」「長さ80m」「建設中に作業員が死亡した」などの話が繰り返されていますが、出典を調べるとすべてが同じ重みの情報ではありません。

どこまでが記録に残る出来事で、どこからが噂なのか。林道の変遷、県立キャンプ場の歴史、1998年の心霊本、さらには地元で進められてきた砂防工事までたどっていきます。

🗺️山神トンネル(山神隧道)の情報

山神トンネルの基礎情報

名称:山神隧道(やまがみずいどう)
通称:山神トンネル/山の神トンネル/化けトン
所在地:神奈川県厚木市七沢
道路:二の足林道(広沢寺温泉~不動尻方面)
延長:約200m(厚木市の公式案内)
竣工年:確実な公的資料を特定できず
構造・環境:照明のない山間部の道路トンネル
位置:鐘ヶ嶽から続く尾根の下、不動尻への林道沿い
現在:登山・ハイキングの道として利用される。一般車両は手前のゲートにより進入制限あり
関連施設:県立不動尻青少年キャンプ場(1970年開設、後に廃止)

山神隧道について、厚木市が公式に説明しているのは「広沢寺温泉から不動尻を経て大山へ至る道の途中にある」「長さ約200m」「隧道の上は鐘ヶ嶽へ続く峰」という点です。

「山の神隧道」と表記する市のページもありますが、同じ場所を指しています。住所も厚木市七沢が基本です。廃墟紹介サイトの一部に「愛甲郡清川村」とありますが、厚木市の公式案内および地図情報とは一致しません。

出典:厚木市「鐘ヶ嶽ハイキングコース(森林セラピーロード)」/厚木市「鐘ヶ嶽ハイキングコース」/廃墟検索地図「山神隧道」

山神トンネルの場所

小田急線本厚木駅から七沢・広沢寺温泉方面へ向かうのが一般的です。厚木市の案内では、広沢寺温泉入口バス停から不動尻方面へ徒歩で向かいます。

神奈川県の観光案内では、不動尻まで広沢寺温泉バス停から約1時間10分、広沢寺温泉入口から約1時間30分、広沢寺前駐車場から徒歩約1時間10分としています。山神隧道はその途中にあり、不動尻まで行かなくても通ることのできる場所です。

林道には一般車両の通行を制限するゲートがあり、トンネル直前まで自由に車を乗り入れられる観光地ではありません。車を停める場合は公式駐車場の案内を確認し、林道のゲートや緊急車両の通路をふさがないようにしてください。

出典:神奈川県「不動尻」アクセス・徒歩時間/厚木市「鐘ヶ嶽ハイキングコース」/道徒然話「二の足林道と山神隧道」2016年

周辺情報:鐘ヶ嶽と不動尻

山神トンネルは、山奥にぽつんと孤立しているわけではありません。

北東側には標高561mの鐘ヶ嶽(かねがたけ)。尾根を登れば山頂付近の浅間神社に至り、周辺には多くの石仏や石碑が残ります。反対側の林道を進むと谷太郎川の上流域・不動尻に出ます。

不動尻は春のミツマタの群生地として知られ、不動の滝や渓谷もある場所。現在では登山者や自然を楽しむ人たちが歩く道として親しまれています。

出典:厚木市「鐘ヶ嶽ハイキングコース」/神奈川県「不動尻」/厚木市観光協会「不動尻・二の足林道」

👻山神トンネルに纏わる噂と心霊現象

  • 工事中に亡くなった作業員が、作業服姿のまま現れる。
  • トンネル内で、誰もいないはずの場所から足音が聞こえる。
  • 暗闇の中に男性の人影が立っている。
  • トンネル付近や沢沿いに、白い服を着た女性が現れる。
  • 女性の殺人事件が近くで起きたという噂がある。
  • 肝試しに来た人が神隠しに遭い、行方不明になったという。
  • トンネルの近くで方位磁石が狂い、方向感覚を失う。
  • 不動尻の廃キャンプ場から子どもの声や人影が現れる。

※ここに挙げたのは心霊本・心霊情報サイト・体験談として流通している話であり、事件や超常現象を確認したものではありません。

とりわけ「建設作業員が死亡」「女性が殺害」「神隠しがあった」という話は、事実かどうかで場所の評価が大きく変わります。以下では、言い伝えとして紹介する部分と、歴史資料で確認できた部分を分けていきます。

出典:路地裏「戦慄の心霊スポット・山神トンネル」/全国心霊マップ「山神トンネル」/「霊視検証!有名心霊スポットの真相」第33回

作業服姿の男性――もっとも古くから有名な怪談

山神トンネルで、まず名前が挙がるのは工事作業員の霊です。

トンネルを掘っていた時期に事故が起き、亡くなった作業員がいまも内部を歩いている。その姿を見たという話が、1990年代の心霊書籍を通じて広がりました。

現在のネット上では、そこへ「作業員が一人死亡した」「多くのけが人が出た」など、具体性のある記述も加えられています。

ところが、被災者の氏名、事故の発生年月日、工事を請け負った会社名といった情報は見当たりません。話が詳しくなっても、裏付けに当たる資料が増えているわけではないのです。

出典:路地裏「山神トンネル」(1998年の心霊本を紹介)/全国心霊マップ「山神トンネル」

トンネルの中から聞こえる、もう一人の足音

「複数人で歩いていると、人数が合わない足音が聞こえた」。そんな体験談も残っています。

山神隧道は約200m、照明がなく、周囲は静かな山林。歩く音や話し声が壁に反射し、位置がつかみにくくなる状況は十分考えられます。

2014年の掲示板投稿を保存した心霊情報サイトには、男性6人で訪れた際、背後の足音と「おい」という男性の声を聞いたとする書き込みがあります。

投稿者自身も風の流れや反響の可能性には触れています。体験談を否定する必要はありませんが、そこに別の人物がいたことを実証した記録でもありません。

出典:「厚木市の怖い話」2014年2月6日の掲示板投稿(転載記録)/厚木市「山神隧道」の長さ・立地

女性の霊、殺人事件、神隠し――噂の舞台が広がっている

作業員の話以外にも、沢で水遊びをする白い女性、トンネルの近くで殺された女性、消えた肝試し客など、複数の話があります。

特に神隠しの噂には、「ここへ来た人が方向感覚を失った」「道が分からなくなった」といった説明が伴います。しかし、具体的な行方不明者の氏名や、いつ警察へ届け出られたかを示す記録までは見つかっていません。

女性殺害事件についても、現場が「沢」「小屋」「公衆トイレ」と説明によって変わります。このように話の中心となる場所が一定していない点は重要です。

「女性の霊が出る」という怪談と「この場所で実際に殺人事件が起きた」という事実は、同じ文章で断定してよいものではありません。

出典:「霊視検証!有名心霊スポットの真相」第33回(神隠し・女性の噂)/全国心霊マップ「山神トンネル」(女性殺害説)/山神隧道の噂の整理

ゼロ磁場だから幽霊が出る?

山神トンネルには、「一帯がゼロ磁場になっていて、方位磁石が狂うため霊が集まる」という独特の説明まであります。

けれども、この場所の磁束密度を測定した記録、異常の発生位置、計測器の校正情報などは提示されていません。「ゼロ磁場」という言葉だけでは、心霊現象との関係を示したことにはなりません。

山で道に迷う原因は、分岐の取り違えや見通しの悪さ、日没など現実的な要因だけでも十分に考えられます。科学用語のように聞こえる表現でも、測定や検証のない説明は噂の域を出ないのです。

出典:全国心霊マップ「山神トンネル」(ゼロ磁場説)/霊能者による訪問記事に掲載された噂

🔎山神トンネルの歴史と噂をさらに深掘り

そもそも山神隧道は、なぜ掘られたのか

この場所を調べていて、意外に難しかったのが「誰がいつ掘ったのか」という基本的な情報でした。

山神隧道は、林道沿いの古いトンネルとして知られています。しかし、一般に閲覧できる厚木市の観光ページには、竣工年や工事の施主、施工会社が書かれていません。厚木市が確認しているのは、二の足林道・不動尻方面へ続く道にある約200mのトンネルだという位置づけです。

ネット記事の一部には「昭和初期に生活道路として建設」といった説明もありますが、何年のどの工事台帳に基づくものなのかが示されていません。資料によって長さも80m、200m、さらに別の数字と食い違っています。

今回は厚木市の公式記載を優先し、竣工年は確定情報として載せないことにしました。これから詳しく調べるなら、林道台帳、古い地形図、国土地理院の空中写真や道路管理者の工事記録を年代順に照合する必要があります。

出典:厚木市「鐘ヶ嶽ハイキングコース」山神隧道の説明/厚木市「鐘ヶ嶽ハイキングコース」/廃墟検索地図「山神隧道」

長さ80m? 約200m? 数字が合わない理由

トンネルの長さについても、情報が統一されていません。

厚木市の「鐘ヶ嶽ハイキングコース」には約200mとあります。一方、古い心霊サイトや新しいまとめ記事の中には「約80m」と書くものもあり、旅行記では「300mくらいに感じた」といった投稿まであります。

こうした数字の違いを、実測したことにして平均するのは適切ではありません。

隧道の延長とは、入口と出口の間の構造物そのものの長さです。入口までの歩行距離、見た目の印象、別のトンネルのデータなどを混ぜれば数値は簡単にずれます。

現時点で採用するのは、厚木市による約200m。より厳密な数字は管理者の施設台帳があれば確認できるでしょう。

出典:厚木市「山神隧道」約200メートル/全国心霊マップ・体験談にみられる距離の違い

1970年、トンネルの奥に県立キャンプ場が誕生した

山神隧道の歴史を考えるとき、大切なのが不動尻青少年キャンプ場です。

神奈川県立公文書館の「青少年行政の始まり」には、1970年(昭和45年)に大平・不動尻青少年キャンプ場が開設されたと明記されています。

これは心霊情報サイトではなく、県の公文書館による青少年施設の沿革です。1964年には県の青少年総合対策本部が置かれ、1969年には青少年施設課が新設されるなど、青少年の余暇・野外活動のための施設整備が進められていました。

不動尻キャンプ場は、そうした県の政策の中で生まれた施設だったのです。

ただし、キャンプ場が1970年に開設されたからといって、山神隧道も1970年に掘られたと決めることはできません。林道とトンネルが先にあり、後からキャンプ場が整備された可能性もあります。

出典:神奈川県立公文書館「青少年行政の始まり」/厚木市「山神隧道」

定員300人。意外なほど大きなキャンプ場だった

不動尻キャンプ場は、山奥の小さなテントサイトという印象とは異なり、かつてはかなりの規模を持っていました。

廃墟資料サイト「廃墟検索地図」によると、施設には12棟のキャビン(定員6~10人)と30張の常設テント(定員5人)があり、全体の定員は300人。利用期間は6~9月の夏期でした。

これらの細かな設備数は二次資料によるものですが、1970年開設という時期については神奈川県の公文書館でも裏付けられます。

林道が現在ほど静かな場所ではなく、夏には子どもや引率者が行き交っていた時代もあったのでしょう。

現在の「暗いトンネルの先に廃墟がある」という心霊スポットの印象は、施設が現役だった頃の様子とはかなり違っていたはずです。

出典:廃墟検索地図「不動尻キャンプ場」(設備・定員)/神奈川県立公文書館(1970年開設を確認)

2002年7月のキャンプ場廃止と、林道のゲート

県立不動尻青少年キャンプ場は、その後廃止されました。廃墟検索地図では2002年(平成14年)7月廃止と記しています。2018年の現地訪問記録にも、キャンプ場跡の建物が撤去され、石組みや土台が残る様子が紹介されています。

また、林道には一般車両の進入を制限するゲートがあります。ゲートを越えた先を歩いて山神隧道に向かうルートは、2012年や2016年の道路探索記録にも残っています。

ここで注意したいのは、キャンプ場の廃止とゲートの設置を、同じ出来事として扱わないことです。現在車が進入できないのは確かでも、設置年月日や具体的な管理上の理由については、道路管理者の正式な記録までは確認できていません。

「キャンプ場が心霊事件で閉鎖された」などの話も見かけますが、県の施設運営資料や報道で確認できた理由ではありません。

出典:廃墟検索地図「不動尻キャンプ場」/一人旅研究会「不動尻キャンプ場跡を散歩」2018年/道徒然話「二の足林道と山神隧道」2016年

キャンプ場跡の「子どもの霊」は、どこから生まれたのか

不動尻キャンプ場跡にも、子どもの霊が現れるという噂があります。

しかし、キャンプ場の廃止と子どもの死亡事故を結びつける具体的な記事は確認できませんでした。「キャンプ場だった場所に子どもの霊がいる」という組み合わせは強烈ですが、施設の用途から事故の存在まで逆算することはできません。

かつて子どもたちが宿泊した場所であることは事実です。ただ、それを「犠牲になった子どもがいる証拠」に変えてはいけません。

興味深いのは、山神トンネルとキャンプ場が別々の施設でありながら、心霊サイトではひと続きの恐怖スポットとして語られることです。林道でつながった二つの場所の歴史が、怪談の中で徐々に一つになっていったのかもしれません。

出典:不動尻キャンプ場の沿革/全国心霊マップ「山神トンネル」キャンプ場の噂/神奈川県立公文書館「青少年行政の始まり」

1998年、池田貴族『関東近郊ミステリースポット紀行』

山神トンネルが広く知られるようになったきっかけとして、何度も挙げられる人物が池田貴族(いけだきぞく)さんです。

音楽活動とともに心霊現象の取材でも知られた池田さんは、1998年に『関東近郊ミステリースポット紀行』を出版しました。ベストセラーズ刊、ワニ文庫、222ページ、ISBN 9784584305829。出版記録で実在を確認できる書籍です。

古い心霊サイト「路地裏」は、その本に山神トンネルの「作業服姿の霊」の体験談が載ったことで、場所の知名度が広まったと説明しています。廃墟検索地図も同様に、1998年の本で取り上げられたことを記載しています。

ここで言えるのは、1998年にこの場所の心霊話を広く伝えた出版物があるということ。一方で、この本が怪談の「初出」なのか、その前から地元に同じ話があったのかは別問題です。

今回は書誌情報と後年の紹介文を確認しましたが、著書の該当ページを原本で逐語照合したわけではありません。池田さんが現地で実際に何を見聞きしたかを、紹介サイト以上に断定することは避けます。

出典:『関東近郊ミステリースポット紀行』書誌・1998年刊行(楽天ブックス)/「路地裏」山神トンネルと池田貴族の紹介/廃墟検索地図「山神隧道」

実は1998年より前の訪問写真も残っている

「1998年に出版された本で有名になった」という説明と、「1998年に初めて発見された心霊スポット」は、まったく違います。

インターネット上に残る古い林道探索サイト「神奈川県の林道トンネル」のページでは、1998年2月28日付の訪問記録として山神トンネルが紹介されています。1998年7月頃に刊行された池田さんの書籍より前の現地記録です。

そこには、ゲートから先を徒歩で歩き、長いトンネルをくぐって行き止まりの林道へ進んだ様子が書かれています。

心霊本とは別の関心――林道とトンネルを記録する目的でも、当時から訪問されていたわけです。

この古い記録は、心霊現象が実際に起きた証拠ではありません。ただ、1990年代の山神隧道と林道の状態を知るためには、後から作られたまとめ記事よりも貴重な資料です。

出典:「神奈川県の林道トンネル」(山神トンネル、1998年2月28日付訪問記録)/池田貴族『関東近郊ミステリースポット紀行』1998年7月刊行

建設事故は本当にあったのか

「トンネルの工事で作業員が亡くなった」という話については、心霊本や情報サイトの記載を離れて考える必要があります。

確認した厚木市の公式案内、神奈川県の観光資料、林道の訪問記録には、建設中の死亡事故について、発生日・犠牲者名・工事名を特定できる記録がありません。

だからといって、事故が絶対になかったと証明されたわけでもありません。竣工年や請負業者が分かれば、当時の地方新聞や労働災害記録、土木関係の工事台帳に当たる道が開けます。

現状では「作業員が死亡した」と史実として断定することも、「事故はなかった」と断定することもできません。

山神トンネルのもっとも代表的な怪談が、まだ一次資料と結びついていない。この点が、今回の調査で残った大きな課題です。

出典:厚木市「山神隧道」公式案内/1998年の心霊本を出典とする「作業服の霊」/全国心霊マップ(工事事故説)

女性殺害事件と「神隠し」――年月日のない恐怖話

「近くの小屋で女性が殺された」「公衆トイレで事件があった」「肝試し客が行方不明になった」という話もあります。

こうした内容は、心霊サイトの紹介を経て少しずつ広がってきたようです。しかし、どの記事も事件の年月日や被害者の氏名、捜査を扱う新聞の掲載情報が明確ではありません。

山中にある場所というだけで、実際に行方不明になった人や事件の被害者を結びつけるのは避けたいところです。

特に「神隠し」は、登山道での道迷いや事故など、実在する遭難事故と混同されやすい言葉です。山神隧道付近の特定の遭難・失踪事件に由来するのかどうか、現時点の資料では確認できません。

出典:霊視検証記事に記載された神隠しの噂/全国心霊マップに記載された殺人・失踪説/心霊情報サイトにおける伝承

2012~2016年、林道の姿は変わっていた

山神隧道の周囲は、何十年も同じ景色だったわけではありません。

道路探索ブログ「道徒然話」によると、2012年に訪れた際には二の足林道で砂防ダムの建設に伴う付け替え道路が整備中で、一部はまだ未完成でした。

その後2016年の再訪では、新しい道路が開通しており、旧道との合流地点や、以前はなかったという車両ゲートの様子が紹介されています。

この記録は訪問者の撮影によるもので、道路工事の正式な完了日を示す行政資料ではありません。しかし、林道そのものが土砂災害対策とともに変化してきたことは分かります。

トンネルの周辺を「何十年も捨てられた廃道」と思っていると、こうした整備の履歴を見落としてしまいます。

出典:道徒然話「二の足林道と山神隧道(前編)」2016年6月7日/穴と橋とあれやらこれやら「山神隧道」2019年

1941年の洪水、そして二の足沢の砂防事業

ここで少し視点を広げ、トンネル周辺の山そのものを調べてみます。

神奈川県の公共事業評価資料「二の足沢砂防事業」には、厚木市七沢の沢が土石流危険渓流に指定されていたことが記されています。流域面積は1.57平方キロメートル、平均の渓床勾配は1/6。沢の底には不安定な土砂がたまり、周囲の山腹には崩壊跡地もあるとされています。

さらに、二の足沢を含む大山山系では1941年(昭和16年)7月の玉川の河川氾濫など、水害の記録が残っていると説明されています。

県は住民や広沢寺温泉などを守るため、高さ11.5m、延長54mの砂防堰堤を整備しました。

これは山神トンネルで事故が起きたことを示す資料ではありません。対象は周辺の沢であり、隧道本体の健全性を示した検査報告でもありません。

ただ、山深い場所に道路や砂防施設が必要だった理由を考えるうえでは重要です。この地域では、幽霊の噂よりずっと前から水と土砂から人の暮らしを守ることが課題になっていたのです。

出典:神奈川県「二の足沢砂防事業」公共事業評価資料(事業目的・1941年洪水の記録)/2012~2016年の林道の付け替え記録

山神隧道の上は、信仰の山・鐘ヶ嶽

「山神」という名前は、何か恐ろしい神様を祀ったから付けられたのでしょうか。

ここで参考になるのが、隧道の上にある鐘ヶ嶽の歴史です。厚木市によると、鐘ヶ嶽は古くから地元の人々に信仰された山で、山頂近くには浅間神社があります。

登山口から神社までには1丁目から28丁目までの石碑が並び、登山道のいたる所に石仏も残っています。市の解説は、こうした石碑や石仏を地域の信仰の名残として説明しています。

ただし、隧道の名前がこの信仰から直接付けられたことを記す命名資料までは確認できませんでした。「山の神」という言葉がもつイメージだけから、心霊スポットの名前の由来を決めるのは避けたいところです。

出典:厚木市「鐘ヶ嶽ハイキングコース」(標高561m、浅間神社、28の丁石)/厚木市観光協会「鐘ヶ嶽ハイキングコース」

現在の不動尻は、春のミツマタの名所

不動尻と聞くと、廃キャンプ場のイメージしかない方もいるかもしれません。しかし県の観光案内では、ここは春のミツマタの大群生地として紹介されています。

例年3月中旬から咲き始め、下旬が見頃。黄色い小さな花が谷間を埋め尽くし、林道を歩くハイカーで賑わいます。近くには不動の滝もあります。

すでにキャンプ場としての営業は終わっていますが、周辺一帯が人の来ない禁足地になったわけではありません。

「廃墟がある=誰も近づかない」「心霊スポット=人が立ち入れない」という印象は、現在の公式観光案内と食い違います。

出典:神奈川県「不動尻」(ミツマタ・不動の滝・徒歩ルート)/厚木市観光協会「不動尻・二の足林道」

📷山神トンネル(山神隧道)に実際に行ってみた

ここからは、山神隧道とその周辺で撮影された現地写真です。

山中にある古いトンネルと、緑に囲まれた林道。その静けさは都市部のトンネルとはまったく違います。照明のない隧道の内部や、入口の周囲の地形にも注目してください。

写真自体を心霊現象の証拠として掲載しているわけではありません。また、各写真の被写体を確定できない状態で「ここが事故現場」「霊が出た場所」と決めつけることは避けます。

神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真

山神隧道は、厚木市が山歩きのコースとして紹介している場所です。ここへ至る道と、隧道を抜けた先の不動尻方面では、登山者やハイカーが通行することもあります。

神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真

トンネルには照明がありません。昼間でも内部の足元を確かめられるライトは必要です。途中で濡れている箇所があれば、滑らないよう注意したいところです。

神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真

周辺には、かつて県立青少年キャンプ場があった時代の林道の名残が残されています。今の静けさだけで、この場所の歴史を判断することはできません。

神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真
神奈川県厚木市七沢・山神トンネル(山神隧道)周辺の現地写真

🧪噂の真相と検証結果

確認できたことと、まだ分からないこと

① 山神隧道は現存し、約200mある
厚木市の公式資料に記載されています。現在も登山・ハイキングのコースとして案内されています。

② 工事で作業員が亡くなった
心霊本や心霊サイトで語られる話です。しかし、事故の年月日・工事名・犠牲者の情報を確認できる一次資料は特定できませんでした。

③ 付近で女性が殺害された、神隠しが起きた
事件の時期や具体的な場所に食い違いがあり、現時点では史実として確定できません。

④ 奥にあった県立不動尻青少年キャンプ場
1970年開設は神奈川県立公文書館の記録で確認できます。2002年7月廃止・設備規模は後年の施設資料に基づくものです。

⑤ 1998年の池田貴族の著書
書誌情報で実在を確認でき、山神トンネルを紹介したとする古い心霊情報サイトの記録も残っています。

トンネルが怖いのは「何かがいる」から?

山神隧道は、全長約200mの照明のないトンネルです。昼間でも奥は暗くなり、足音や声の反射、湿った地面、天候による水音など、都市部では意識しないものが目立ちます。

暗い山道で「もう一人いるような足音」を感じたとしても、まず反響や周囲の人の存在を確かめる必要があります。一方で、体験した人が恐怖を感じたこと自体を、根拠がないからと切り捨てる必要もありません。

重要なのは、体験談は体験談、工事事故は工事事故、地域史は地域史として扱うことです。山神トンネルは、その違いを知ることでかえって奥行きの増す場所だと思います。

夜間の肝試しより、山道としての安全対策を

山神トンネルへ向かう林道は、ふだんの市街地歩きとは条件が違います。

一般車両の乗り入れを制限するゲートがあり、歩行距離も長め。周辺には急斜面、ぬかるみ、山道の分岐があります。夏から秋にはヤマビルや虫、野生動物への備えも考えたいところです。

神奈川県は不動尻までの林道歩きに約1時間以上かかるため、体力に自信がない場合は無理をしないよう案内しています。厚木市も鐘ヶ嶽の登山道には危険な急斜面があると注意を促しています。

トンネル周辺で撮影する場合も通行の邪魔をせず、ゲートの無断開放、バリケードを越えた立ち入り、夜間の無理な探索は避けてください。

出典:神奈川県「不動尻」のアクセスと注意事項/厚木市「鐘ヶ嶽ハイキングコース」危険箇所の注意/二の足林道のゲート・現地記録

😱山神トンネル(山神隧道)の恐怖度

雰囲気:★★★★★
立地:★★★★★
心霊現象の有無:★☆☆☆☆
過去の事故事件の有無:★☆☆☆☆
総合評価:★★★★☆

照明のない山中の長い隧道、徒歩でしか近づきにくい立地、そして1990年代から全国に広まった作業員の霊の噂。心霊スポットとしての雰囲気は非常に強い場所です。

ただし、噂の元となる工事事故や殺人事件を裏付ける資料は確認できていないため、事件・事故の項目は低めにしました。恐怖度は当ブログ独自の評価であり、超常現象の存在を認定するものではありません。

✍️まとめ

山神トンネルを有名にしたのは、作業服姿の霊と、神隠しの噂でした。

でも、この場所の資料を追いかけていくと、幽霊以外にも気になる歴史がいくつも見えてきます。

1970年、隧道の向こうに開かれた県立青少年キャンプ場。1998年、心霊研究家・池田貴族が紹介したという怪談。2000年代のキャンプ場廃止。そして2010年代に記録された林道の付け替え。

さらに、この山では昭和16年の水害が記録され、土砂災害に備えるための砂防工事も行われていました。

その一方、もっとも有名な「工事中に亡くなった作業員」の話を裏付ける記録は、まだ特定できていません。広く知られる話だからといって、史実として確認された話とは限らないのです。

かつては夏のキャンプ場に向かう道であり、いまは山を歩く人が通る道。

その途中にある約200mの真っ暗な隧道を、人々はいつしか「化けトン」と呼ぶようになりました。

もし本当にこの土地の怪談を深く知りたいなら、霊の正体を考える前に、いつ誰がトンネルを掘ったのかという基本的な記録から探してみるのも面白いかもしれません。

それでは――お憑かれさまでした。

🔗関連する心霊スポット

旧善波トンネル(善波隧道)【神奈川県】――「もう死なないで準一」の交通安全看板
小坪トンネル(小坪隧道)【神奈川県】――女性の霊と昭和の怪談
旧々吹上トンネル【東京都】――明治の隧道と殺人事件の噂
八王子城跡【東京都】――御主殿の滝と落城の史実

💬読者の声・体験談を募集中

山神隧道を訪れたことがある方、昔の不動尻キャンプ場を利用したことがある方、この林道の歴史をご存じの方からの情報をお待ちしています。

特に、山神隧道の竣工年を示す資料、工事関係の記録、1998年以前の心霊話を掲載した雑誌・新聞、県立キャンプ場の当時の写真などがあればぜひ教えてください。

怪談の体験談だけでなく、地域の歴史を知るための資料や手がかりも歓迎しています。コメントやお問い合わせフォームからお寄せください。

コメント